
日本整形外科学会では、運動器の障害による要介護状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉として「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)」を提唱して新しい概念で治療を行う方針を打ち出しています。
ロコモティブシンドロームは「ロコモ」と省略された呼称もあり、運動器症候群という意味を持ちます。
ロコモティブシンドロームとは、筋肉や骨、関節などの老化によって運動器の機能不全と、寝たきり等になる要介護リスクが高まった状態を含めたものです。
簡単にまとめると、すでに老化によって運動器の機能不全になった状態だけではなく、寝たきりなどのリスクが高まった機能不全直前の状態も一つのカテゴリーに捉えて治療しようというものです。
似たような治療概念で「運動器不安定症」というものが昔からあります。
こちらは65歳以上で転倒のリスクが高まった状態から範囲になり、ロコモティブシンドロームより広範囲かつ経度の運動障害を発生した高齢者を含んでいます。
ロコモティブシンドロームは、寝たきり等の要介護リスクが高まった状態から対象にしているのが特徴で少子高齢化の進む日本において、重要な位置づけになっています。
人は誰でも歳を取ると老化して運動機能が衰えます。
杖もなしで健康的に歩いたり日常生活をこなすことが理想ですが、完璧に自立した状態を維持できる人はごく一部で、そこを目標にするのは困難な人が多いのも現状です。
老化は受け入れないといけないものですが、人によっては死ぬ直前まで介護不要で自立した生活をできる人もいれば、60代後半くらいから要支援状態になって、70代、80代には寝たきりの全介助状態になってしまう人もいます。
要介護状態から長生きするケースもあり、医療の進化によって寿命が長引くことで長期間介護をしないといけないケースも増えています。
ロコモティブシンドロームは、早期診断をして将来要介護状態になるリスクの高い人を判別して早期治療やリハビリ・予防を促すことを目的にしています。
整形外科でのリハビリに積極的な人は、老化予防意識が高く要介護状態になるリスクの低い人が多いです。
逆に早い段階で要介護状態になってしまう人は、要介護状態に陥るまで予防策を講じることなく生活してしまう傾向があります。
ロコモ診断を通じて早期に要介護状態になるリスクの高い人を区別して重点的に治療を行うことで、高齢者の介護リスクの緩和を目指すのが基本概念です。
上記7項目中ひとつでも該当していれば運動器が衰えているサインで、ロコモティブシンドロームに分類されます。
ロコモ診断の該当項目をゼロにすることを目指して早期リハビリや予防運動を促進することを目的にしていて、自力で解決できない人は整形外科への受診を勧めています。
病院で行うロコモ診断は、さらに細分化されていて、立ち上がりテストや25項目の質問でさらに細かくロコモ度をチェックしています。
予防法はウォーキングを増やしたり、姿勢を悪くないような日常生活の改善、ストレッチなどがあります。
老化による運動機能低下は無理な負荷をかけると逆効果になってしまうこともあるので、簡単な運動から始めることが大切です。
できれば医師やPT・OTなどリハビリの先生の指導の元で予防法をアドバイスもらうようにしましょう。